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今回は雑誌ではなくテレビ。イギリス国営放送BBCの震災報道について。

 毎度お馴染み[権威や大組織に弱い、自我のない日本人]論がこんな時ですら顔を出す。

BBCに限らず、英語圏のメジャーなメディアは、このテーマにはまる題材を常に探していると言っても過言ではない。

「他の先進国で福島原発のようなことがあれば、電力会社は社会全体から激しい吊し上げを喰らうだろう。ところが日本人は一部の活動家を除き東電前でデモをする人すら見当たらない。これは大組織には逆らえない、“自我”を持たない日本人を象徴している。」だとさ。

 おかしいだろ。危機は今、この瞬間、進行中なのだ。

 今、ボクたちが一番やってはいけないことは、福島原発の第一線で、文字通り命懸けで戦っている東電や関連会社の現場作業員に、余計なこころの負担をかけること。

 BBCはそんな簡単なこともわからんのか。

今後もずっと責任追及は必要ない、と言っているのではない。

主電源と予備電源が同じ場所にある原発の「安全性」を世に訴えてきた御用学者たち。彼らを中心とする官・産複合体とその恐るべき無能と高慢。それを許してきた歴代自民党政権。

言いたいことは山ほどある。だが今はその時ではないだろうと、我慢しているのだ。

願わくは、この危機が収束して上のすべてを徹底的に吊し上げできる時が、1日も早く来ますように。そうすれば、本当に「自我がない」のは紋切り型のニュースを垂れ流すBBCの記者のほうだ、ということがはっきりするだろう。

 今週のタイム誌(アメリカ版)に,震災に対する君たち日本の若者の反応が報道されている。そのなかで気になるところがあったので反論したい。

  一時避難場所になったさいたまスーパーアリーナで,避難生活を助けるためにボランティアを募集したところ、埼玉や東京から若者たちが殺到し,1500人の順番待ちになった。

  気仙沼では,自らも被災しながら他の避難者のためにボランティアに精を出すある15歳の少年が,高校に合格して未来への夢と希望を膨らませている。

 この記事はそんな例を挙げ、さらに次のように述べている。 上の世代の日本人、とくに政治家や官僚がだらしないのにも関わらず,日本の若者たちは大震災に対し“意外にも”力強く立ち向かっている、と。

問題なのは“意外にも”の部分だ。

 この記事によると、現在の日本の若者たちは、甘やかされ(overindulged)ているというのだ。だから今回の震災への若者の積極的な対応が意外だ、 という論理だ。

冗談ではないぞ。

  今の大学生たちはバブル崩壊後に生まれ,好調な経済というものを知らないで生きてきた。幼稚園や小学校でオウムと阪神大震災のダブルパンチを経験し,挙げ句の果てには史上最悪の就職氷河期と戦っている。 若者が「甘やかされ」ている、とはどこの国の話だ。

今の若者たちの精神的なタフさは,少なくとも戦後の日本では最強だろう。

日本の若者をなめんなよ。

 

  海外メディアが震災後の日本人の冷静さや礼節に驚き、また賞賛したことは割とよく知られている。だからこのブログではあえて触れなくてもいいかな、と思ったのだが、余りに痛切な記事を読んだので紹介したい。

 それは「タイム」の3月28日号に載った。

  家を失った漁師が家族と隣人の当面の食べ物を探すためにガレキの山と化した自宅に戻る。何とか食料を…、と求める彼には、娘のお気に入りだったぬいぐるみが目に入ったが、それを拾いあげる余裕もないほど極限の状態だった。

  泥水につかってしまった幾ばくかのお米をすくい上げ、袋に詰める漁師。ところがこんな状況でも、彼はなおこの壊滅的な打撃を受けた地方の人々が示し続けてきた不屈の精神と寛大な心をみせたのだ。

(He displayed the fortitude and generosity that have so defined this devastated region of Japan.)

 なんと、取材をしているタイムの記者にこう言った。                                 「汚れてしまったお米で恥ずかしいのですが、いくらか差し上げましょうか?」

 さらにこの記事は指摘する。多くの被災者が異口同音に口にする「しょうがない」という言葉がしばしば “There is nothing we can do.”  (私たちには何もできない) と誤訳されている、と。

 「しょうがない」には、確かに運命に翻弄される人間の無力感が込められている。                しかしこの言葉の奥底には、自分がコントロールできないもの、たとえば自然の暴威には絶対に負けない、という静かな決意も潜んでいるのだ、とこの記者は言う。                                 ちなみに、この記者は日本人の祖母を持つバイリンガル。

 言われてみればその通りだ。

だから ”There is nothing we can do. So let’s hold on!” (私たちには何もできない。だからがんばろう!) は、あり得ないが、(しょうがない。だからがんばろう!)は十分にあり得るのだ。                       たとえストレートな英語には訳せないとしても。                                     全てを奪われてなお、泥水に汚れたお米を赤の他人に分け与えようとしたあの漁師のように。

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