2011.05.23 UP
アメリカ文化のふところの深さ
現在、ニューヨークにはトヨタのレクサスのハイブリッドモデルを使ってタクシー業を営んでいる運転手がいる。たった6人だけだが。
大衆車が大半を占めるイエローキャブ市場で、最先端の高級車を使っているのだから当然目立つ。 “I sort of feel like a celebrity.”(なんか有名人になった気分)、とそのうちの一人は言う。
ところがニューヨーク市当局は、次期タクシー用車は日産のNV2002のみを採用すると発表した。ニューヨークでは、現在9社16車種がタクシー(イエローキャブとして有名)用として認められているが、これを1車種に統一して、2013年から順次入れ替えるというのだ。(ちなみに日産のNV2002が採用されたのは燃費や信頼性などの観点から)。
この決定に6人のレクサスキャブドライバーは「レクサスのセレブリティ気分が味あえなくなって残念」とニューヨークタイムズに述べている。
ボクには免許がない。英語を独学していたころ、更新費用が出せず失効させてしまった。だからレクサスにもNV2002にも興味はない。興味があるのは、両車とも日本車なのにニューヨークタイムズの記事には“Japan” の“J ”の字も出てこないことだ。
ニューヨークタイムズだけではない。ボクが調べた限り、主要メディアの記事で、アメリカ最大の都市の未来の顔として外国の車が選ばれた、ということに注目しているものはない。 「どこの国のものだろうが、良いものはよい」というアメリカ人のふところの深さを見せつけられたように思える。
こんな話を聞くたび、思い出すことがある。2001年、タフィ・ローズというアメリカ人バッターがパリーグでホームランを打ちまくり、シーズン終盤にはもう少しで王貞治氏が持つ年間日本記録55本を破るところまでいく。この時、王監督率いる福岡ダイエーホークスは、ガイジンに神聖な日本記録を破らせるわけにはいかない、とばかりに徹底した敬遠攻めに出たのだ。かっこ悪いにもほどがある。
奇しくもまったく同じ年、アメリカに鈴木一朗という無名の新人がやってきてヒットを打ちまくり、もう少しで伝説の名選手”シューレス”ジョー・ジャクソンが持つ新人最多安打記録を更新するところまでいく。この時、アメリカ人投手たちは、この若者の目の色、肌の色、まして国籍などには一顧だにせず、正々堂々と正面から戦いを挑んだ。そしてイチローは記録をつくる。イチローもクールだったが、ボクはアメリカ人投手たちの男っぷりにあこがれた。
United States of America この国にはひどいところも確かにある。だが、まだまだ我々が見習うべきところもたくさんある。
追伸最近お気に入りのCMがある。漫画家の井上雄彦が出演しているカップヌードルのCMだ。とくにセリフが最高。「強い者などいない。強くなろうとする者。いるのはそれだけ。」 ちょっといじれば英語を勉強するうえでよい標語となる。
「英語のボキャブラリーに強い人間などいない。新しいことばを覚えたい人間。いるのはそれだけ。」
菊池健彦Takehiko Kikuchi
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