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2011.05.02 UP

「雨ニモマケズ」

  そろそろ震災以外の記事にも触れたいのだが、英文誌の日本関連の記事は依然として震災報道に集中している。という訳で、今週も震災です。

 渡辺謙の朗読でクローズアップされた宮澤賢治の「雨ニモマケズ」は「エコノミスト」誌にも引用されている。(Be not defeated by the rain.)

 日本人の震災後の我慢強さに敬意を表しているが、同時にこの我慢強さが仇となる懸念も加えている。「国民が官僚や政治家に不満を示すことを我慢し、結果として日本が再出発するのに不可欠な改革や論争が,中途半端に終わってしまうのでは?」というのがその内容だ。

 しかしエコノミストの「心配」は無用。そこまで日本人は我慢強くない。

先日の統一地方選で民主党が惨敗したり、政府の対応に不満が続出しているのは周知の通りだ。 さらには、この発言に非難が集まった。

自民党時代に原発推進派の中心的な役割を果たしてきた与謝野馨経済財政担当相が、その責任を問われ、「その時その時の最善の判断をしてきた。謝罪する必要はない。」と答えたのだ。つまり、政治家は最善の努力をすれば結果責任は問われるべきではない、ということだ。

枝野官房長官がこの発言を受けて「不快感」を表明したそうだが、それでは不十分。首相である菅さん自身が与謝野発言を糾弾すべきだったのだ。それなのに何もアクションを起こさない菅さん。これでは、首相自身が、政治家は結果責任を負わなくてもよいと考えている、と思われても仕方ないだろう。

 何を隠そう、ボクは少なくともバブル以後、〇〇大臣と名のついた人の中でまともに働いたのは一人しかいないと思っている。それは、血液製剤からHIVに感染してしまった血友病患者の人権と生活を守るため、厚生官僚と戦った15年前の厚生大臣・菅直人だ。

だから総理大臣となった時には心が躍った。その後も、たとえ成果が上がらなくてもどんなに期待外れでも、ずっと支持してきた。

  今、菅さんは、民主党内から「菅おろし」の強風を吹きつけられ、「ドン菅」「菅ちがい」など悪口の大雨にさらされている。でもそんな菅さんでも信じたい。

「雨ニモマケズ」。

 今週は間接的なかたちでの震災関連。日本人が自信を回復する一助になるかも知れない記事を紹介したい。

  震災で打撃を受けた日本の企業が世界のハイテク製造産業に大きな混乱をもたらしていることを、「エコノミスト誌」が報じている。

  例えば、三菱と日立で世界市場の9割を押さえている特殊樹脂は、スマートフォン用の半導体製造に欠かせない。また、クレハが7割のシェアを持つ、小型電池用ポリマーはIpodに使われている。

ところが、こうした先端ハイテク部品の製造と流通が震災で滞り、世界の製造業者が頭を抱えているらしい。 この記事は震災直後によくあった[未曾有の災害に、冷静にそして勇敢に立ち向かう日本人]を称賛する、やや情緒的だった報道とは全く性質が違う、ドライなビジネス報道。       震災がもたらした混乱を、世界経済が抱える重要問題として、淡々と客観的に伝えている。

  韓国・中国に押され電子王国の地位が危うくなっている日本だが、我々の知らないところでJapanブランドが健在なのは喜ばしい。

「エコノミスト誌」の乾いた文体が、かえって日本企業が長年にわたる愚直な努力の末に勝ち得た、 

Too crucial to do without =欠けがえのない 

という地位を際立せていた。

 東日本大震災を伝えた「ビジネスウィーク」誌が、表紙にひび割れた日の丸を描き、ひんしゅくを買ったことはテレビ報道で知った。

  ボクの英語右翼の血が騒いだ。

 「勝手なことを書いたら許さんぞ!」とばかりに腕まくりして読んだら結構客観的な記事だった。        全体を紹介するスペースはないので一番印象的だったくだりを紹介しよう。

 [悲しみが大き過ぎて手放しで称えることは出来ないが、以下の事実は日本の技術の偉業だ。 100年に一度の今回の地震の中でも、倒れた超高層ビルは一つもなかった。 時速240キロで走行中に脱線した新幹線は一両もなかった。 そして日本の家族や会社が積み重ねてきた避難訓練と災害への備えは、最も価値ある“救われた命”というかたちで実を結んだ。 ]

“reaped the most precious of all harvests: lives saved”

そう。つい忘れがちだが、日本は健闘したんだ(原発を除く)。 四川大地震やスマトラ沖大地震、あるいは直前にあったニュージーランドの地震、その規模と人的被害を思い出して欲しい。 もちろん、ビジネスウィークが言う通り、悲しみが大き過ぎて手放しでは喜べないが、日本人は誇りに思ってもいいのではないか。

 ある週刊誌で16歳と19歳のふたりのお孫さんを亡くしたおばあさんが、彼らの遺影を撫でている写真を見た。若者の命を奪った地震・津波。このおばあさんのやるせなさ、絶望は、1億2千6百万人の悲しみだ。

 でもそんなとき、客観的な海外からの目線でものを見ると、不安と悲しみのさなかでつい忘れがちだった自信を思い出すことができた。

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